本コラムではARマーケティングを解説します。ARマーケティングとは、AR(拡張現実)を用いた消費者・ユーザーとのエンゲージメントを高める手法です。ARマーケティングの成功事例や種類に加えて、効果や課題についても詳しくご紹介。
10分でARマーケティングの全体像が把握できます。
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AR(Augmented Reality)とは、「現実世界を立体的に認識する技術」のことです。
よく「現実世界にデジタルコンテンツを重ねる表現方法」を指す内容もあるのですが、それはあくまで「AR技術を用いた表現方法」であり、技術的にはやや間違っています。
また、日本語では「拡張現実」と訳されます。AR技術を利用すると、写真や映像にCGなどのデジタル情報を重ね合わせ、現実世界にないものが存在しているかのように表現できます。
例えば、バーチャル上で洋服や靴、ジュエリーの試着ができたり、「ポケモンGO」のように仮想キャラクターを現実世界に登場させて一緒に遊んだりできるようになります。
ARを利用するにはスマートフォンやタブレット、「ARグラス(スマートグラス)」などの専用デバイスが必要です。ARグラスはハンズフリーで利用できるため、作業現場で人のアシストを行う「作業支援ソリューション」としても活用されています。
そして、ARマーケティングとは、「AR(拡張現実)」を用いて日常×非日常のコンテンツを消費者に届けることで、態度変容・行動変容を促すような施策方法を指します。
態度変容とは、わくわくしたり、驚いたり、懐かしんだりといった感情の変化のことを指します。
行動変容とは、特定のブランドの商品を好んで購入する用になったり、SNSへ投稿をしたり(UGC創出)といったことを指します。
参考:ARとは?VR/MRとの違いを分かりやすく解説
参考:AR(拡張現実)とは?仕組み、ゲーム以外のビジネス活用事例を簡単に解説
ARは、「何の情報を元に表現をするのか」という観点から、以下4種類に分けられます。
マーカー型は、画像や写真を認識してデジタルコンテンツを表示させるARのことです。画像や写真を、ARを表示させるための「マーカー(目印)」として登録するため、マーカー型と呼ばれます。画像認識型と呼ばれるARもマーカー型のひとつです。
GPS型は位置情報を利用するARのことです。位置認識型やロケーションベース型とも呼ばれ、地図と連動したゲームや道案内サービスに良く利用されています。
空間認識型は、現実空間の奥行きや立体感、高低差などをカメラやセンサーで認識し、その場にあわせたデジタルコンテンツを表示させるARです。 空間認識型を使うと、部屋の大きさや家具と家具の隙間、奥行きまで認識できるため、ARを使った家具の試し置きなどが可能になります。
物体認識型は、特定の立体物を認識しコンテンツを表示させます。マーカー型と似ていますが、マーカー型は平面を扱うのに対し、こちらは立体物を扱う点が異なります。対象物を360度どこからでも認識できるため、例えば、商品のパッケージを読み込むとARが起動する、観光案内にカメラをかざすと詳しい説明動画が現れる、という使い方ができます。
このほか、専用アプリを使ってARを起動させる「ARアプリ」と、ウェブブラウザ上で起動するアプリレスの「WebAR」とで区別する場合もあります。
参考:ARの種類
ARをマーケティングに活用する手法は、イベントや観光、商品プロモーションのほか、名刺や雑誌などで多く見られます。
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・イベント
キャラクターや芸能人と一緒に写真撮影ができる「ARフォトフレーム」や、スマートフォンをかざすとクイズのヒントや答えが浮かび上がる「AR宝探し・AR謎解きゲーム」、ARを使った博物館や美術館でのデジタル3D模型や解説動画、台紙やスタンプ不要の「ARスタンプラリー」など、さまざまな活用方法があります。
イベントで活用する場合、KGIはユーザー満足度(NPS)、KPIは「AR体験率」「1人あたりAR体験数」「コンテンツ体験完了数」「AR経由でのノベルティや会員の申込数」などが挙げられます。
参考:イベントでのAR活用方法
・観光
都道府県や市町村、観光地のポスターやガイドブックにARを設置すれば、スマートフォンをかざすだけで観光案内や移住者インタビューの動画を見せることができます。イベントやポスター・チラシも同様で、紙面では伝えきれない情報をARで補うことが可能です。紙面にスマートフォンをかざすとデジタル花火が上がりお祭り気分を味わえる、といったコンテンツも登場しています。
また、歴史的建造物や名所旧跡をARで復元したり、ARで経路案内や観光案内を提供したりもできます。
観光で活用する場合、KGIはユーザー満足度(NPS)や「スタンプラリー完了数」、KPIは「AR体験率」「1人あたりAR体験数」「コンテンツ体験完了数」などが挙げられます。
参考:観光でのAR活用方法
・商品プロモーション
購入特典として、ARを使ったデジタルコンテンツを提供することで購買意欲を高め、特別感を演出できます。人気アーティストのCDに、ファンに向けた特別なミュージックビデオを仕込むなど、ファン心をくすぐる演出はロイヤリティ向上も期待できます。
プロモーションで活用する場合、KGIは「ユーザー再購入意欲率」、KPIは「AR体験率」「1人あたりAR体験数」「UGC創出数」「AR経由でのノベルティや会員の申込数」などが挙げられます。
参考:商品プロモーションでのAR活用方法
・雑誌、名刺
名刺や雑誌にARを付け加えることで、紙面だけでは伝えきれない情報を提供します。ガイドブックにAR設定して、掲載店舗の紹介動画や地図情報を提供することも可能です。名刺の場合は話題作りとしても活躍します。
雑誌や名刺で活用する場合、KGIは「AR経由での次点誘導数」、KPIは「AR体験率」「1人あたりAR体験数」などが挙げられます。
参考:雑誌でのAR活用方法
ARマーケティングは高い効果が期待できる一方、技術力やROIの不確定性などの課題があります。
ARは視覚的な注目を集めやすく、脳に「驚き」といった刺激を与えるほか、「非ARコンテンツと比べて、70%ほど記憶に残りやすい」という研究発表があります※。ARを使えば、より印象的で記憶に残りやすいコンテンツが提供でき、高い広告効果が期待できます。
※… How augmented reality affects the brain
画像や動画コンテンツは見る人によって個人差があまりなく、同じような理解・体験しかできません。しかしARは、ユーザーの好みや目的に合わせてカスタマイズさせた、主観的な体験ができます。
例えば、ARで家具の試し置きをして、自分の部屋に合った家具を検討できます。自分の顔にバーチャルメイクを施し、自分に似合うコスメを探すことも可能です。
個々に合わせたコンテンツを提供できるため、ユーザーの体験向上につながり、ひいては、エンゲージメント向上による購買行動・ブランド認知などのマーケティング効果が期待できます。
ARは、ユーザーの行動や体験を促すインタラクティブなコンテンツです。ARコンテンツは動画と比べ、4倍ほど平均滞在時間が長いという調査結果があります※1。またARとTVを比較すると「ARの方が45%ほど高く注目を引くことができる」という研究報告もあります※2。
ARは動画やTVよりも興味関心を引きやすいコンテンツといえます。マーケティングに取り入れることで、ブランドの認知や想起率を高めることにつながるでしょう。将来的に愛着度や購買行動にまで影響を及ぼす可能性も考えられます。
※1…How toRevolutionise Your Marketing Strategy With Augmented Reality
※2… How augmented reality affects the brain
スマートフォンを使うARが主流のため、利用中、歩きスマホになってしまうという課題があります。また画面内でしか表示できないため、表示領域が限られてしまうことも課題です。バッテリーや通信回線を使うため、どちらかが不足する状況だと利用できません。
このほか処理能力の課題もあります。空間認識などの複雑なARを利用する場合は、高い処理能力が必要です。しかし、スマートフォンの処理能力には限界があります。一般利用を目的としたARは、一般流通しているスマートフォンが処理できる範囲のものしか提供できません。
GPSを使うARの場合、位置情報が必要です。ARに限った話ではありませんが、位置情報などを流出するリスクは伴います。
また、デジタル・アサルトの問題もあります。デジタル・アサルトとは、デジタルにより人々の権利が侵害されることです。例えば、「ポケモンGO」で現実世界とデジタルをリンクさせた結果、ひとつの拠点に人が押し寄せ、不法侵入者が出るなど、公共施設や地域がデジタル・アサルトにさらされました。
また、車のナンバー、民家の情報、人の姿や顔の意図しない映り込みで、プライバシー侵害となる可能性もあります。
ARは、商談や利益の増加に直結するコンテンツではありません。費用対効果がわかりにくい、という問題があります。またコストに見合うリターンがあるかどうかは不確定です。
そのため、KGIを「ユーザーエンゲージメントの向上(≒愛着度やUGC創出数、NPS、再購入意欲など)」にするケースが多く、中長期的な活用の視点が重要です。
「IKEA Place」は、イケアで取り扱う2,000点以上の商品を、ARで試し置きできるアプリです。イケアがAppleと共同開発し、2017年より提供を開始しました。
アプリを起動し、家具を設置したい場所にスマートフォンをかざすと、画面越しに実寸大の3D家具が出現。「空きスペースに置けるのか?」「部屋の雰囲気に調和するのか?」といった疑問を家にいながら解消できます。写真では確認しにくい質感まで再現されているため、商品のイメージをつかみやすく、購入後のミスマッチや返品を減らす効果も期待できます。
出展: LESSAR事例
「夕暮れ限定AR」はTBSドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』の放送前プロモーションとして公開されたコンテンツです。夕暮れ空にスマホをかざすと、主演俳優のボイスメッセージ入りAR動画が届きます。
本コンテンツは「ドラマの世界観や、夕暮れという時間帯の『かけがえのなさ』を味わってもらいたい」との思いで、夕方の16時~18時限定で体験できるように設計されました。公式Twitterでは「#夕暮れ限定AR」のハッシュタグを付けた投稿を促し、認知拡大や視聴者同士の交流も図っています。
1週間限定の、限られた時間にしか利用できない企画でしたが、体験回数は9.6万回以上、体験人数は約3万人以上と多くの人に利用されました。1人当たりのリピート体験回数は3回。ハッシュタグ数、SNS投稿数は1000件を超えています。
https://www.youtube.com/watch?v=R5OnjiDa71s
L'Oreal Makeup Geniusはバーチャルメイクアップができるコンテンツです。スマートフォンやタブレット端末のカメラを使い、画面に顔を映すと、リアルタイムでアイシャドウやチーク、アイライナーといったコスメの体験ができます。
バーチャルメイクで商品を試せるほか、気に入った商品があればそのままECサイトで購入できます。また店頭で商品のバーコードをスキャンすると、その場で該当用品のバーチャルメイクが可能になります。試供品は不特定多数が使うため、衛生面が気になる人にとってはうれしい機能です。
出展: LESSAR
ブレーキパッドやディスクローターなど、ブレーキパーツを専門に販売・企画・開発を行う株式会社ディクセルは、他社との差別化&認知度拡大を狙い、展示会で「ARスロット」と「ブレーキパッド診断」を導入しました。
「ARスロット」は展示ブースにあるステッカーをスキャンすると、AR画面が開きスロットが楽しめるというもの。当たりが出ると、ディクセルオリジナルトートバッグがもらえます。またARスロットが終わると自動的に「ブレーキパッド診断」へ移動。チャット形式の診断が始まり、自分に合ったブレーキパッドがわかります。
ARスロットと診断がひとつにまとまった、楽しみながら商品についての理解を促せるコンテンツです。
「ARスロット」を導入した結果、ARアクセス数が約2000PV、そこからブレーキパッドへ診断へ移動したのは約700PVとなりました。ステッカーにスマートフォンをかざす人を見て「何をしているのだろう」と人が集まり、結果的に多くの人の来場につながったとのことです。
出展: COCOAR
2019年から熱海市で開催されている観光プロモーション「熱海対ゴジラ」。2023年度のイベントに、ARコンテンツが活用されました。ARを起動すると、ほぼ等身(118.5M)のゴジラが登場。写真撮影ができます。
本コンテンツは空間認識機能を使っており、マーカーなしで体験ができます。どこでも好きな場所で、ゴジラを出現させられるのが特徴です。2週間ほどで体験者数は1300件を超え、表示回数以上の写真撮影回数が確認できたとのこと。多くの人がさまざまな角度から撮影し、ARを楽しんだようです。
AR技術を活用したマーケティングは、商品やサービスの魅力を直感的に伝えることができるため、今後さらなる注目が予想されます。特に画像や動画よりもユーザー体験が良く、購買体験を改善できるため、取り入れる企業は増えていくことでしょう。
ARはマーケティングに有効ですが、どうやって活用したらいいのか分からないという方も非常に多いです。
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