ファンマーケティングとは、製品やサービス、ブランドに対し、愛着を持ったファンを増やすことで、中長期的に売上を拡大させるマーケティング手法です。
ファンマーケティングによって、顧客が商品やサービスを継続的に利用したり、愛着を持ったファンがSNS上で良い口コミを広めてくれたりします。
また、第三者的な評価は心理的に信頼性が上がり、興味を持つきっかけや購買の判断にも影響するといわれています。
今回は、様々なファンマーケティングの成功事例や最新トレンドについて、詳しくご紹介いたします。
「UGC(User Generated Contents)」とは、一般ユーザーの手によって作成されたコンテンツです。「ユーザー生成コンテンツ」とも呼ばれます。
具体的には個人のブログやSNS、動画投稿サイト、電子掲示板、などが挙げられるほか、Amazonなどの商品レビューやアットコスメの口コミなども含まれます。UGCを重視することでアテンションの獲得やSNS上での影響力などの向上が期待できることに加え、企業主体ではない個人による投稿のため共感を得やすく信頼度が高いというのがメリットです。
UGCが重視される背景には、スマートフォンの登場やSNSの普及、コロナ禍などの影響によって得られる情報量が急激に増えた世の中で、ユーザーは常に広告にさらされつづけることによる「広告への嫌悪感」が生まれ、一方で口コミのような第三者からの「生の評価」を気にする人が増えたことが挙げられます。その点でUGCには「信頼できる情報」という価値が見出されるようになっていきました。
UGCでは現在、「ULSSAS」と呼ばれるSNS時代の新たな行動プロセスが注目されています。ファンマーケティングにおいて有効なアプローチですので、概要についてみていきましょう。
ULSSASはアテンション獲得に有効な、SNS時代の新しい購買行動プロセスです。
ULSSASは現代特有のユーザー行動の頭文字を取った言葉であり、それぞれ以下の意味があります。
・U:UGC(ユーザー投稿コンテンツ)
・L:Like
・S:Search1(SNS検索)
・S:Search2(Google/Yahoo!検索)
・A:Action(購買行動)
・S:Spread(拡散)
ファネルなど、従来のユーザーの行動モデルとは異なり、「UGC→Spread」へと進み、また「UGC」へ戻るというふうに、ぐるぐると回転していくように進んでいくのがULSSASの特徴です。
また、購買行動されたものがいかに拡散されるか、という点において、The New York Timesの「Psycology of Sharing」によると、6つのペルソナがあるとのことです。
・利他主義:役に立つ情報を広いつながりに向けて共有する
・キャリアリスト:ビジネスネットワークにおいて、情報を共有する
・流行に敏感:最先端な情報を取得しており、創造的で若い。自分のアイデンティティを定義し、表現することに関心がある
・ブーメラン:共有することで正当性を感じたり、反応を得るために共有したりする。ソーシャルメディアで活動している。
・コネクター:思慮深く、交友関係の拡張、維持のため共有する
・選択的:有益なコンテンツを個人に合わせて個別共有する
この6つのペルソナにとって共有する価値のあるコンテンツをいかに作れるか、が争点になりますし、
競争の激しいアテンション獲得を達成するために「UGC」がいかに重要かがわかります。
ファンマーケティングと混同されがちな言葉に「インフルエンサーマーケティング」があります。両者は似て非なるものですので、しっかりと意味を理解しておきましょう。
「インフルエンサーマーケティング」は有名人に商品を宣伝してもらうことで、一気に認知・売上を獲得するマーケティング手法です。
一方で「ファンマーケティング」は、実際の消費者に愛着を持ってもらう、または愛着を持っているファンによる口コミを増やすことで認知・売上拡大を考えるマーケティング手法です。
それぞれアメリカから輸入された、歴史は浅い言葉のため、それぞれの中でも解釈に少々の差はあります。
また、ファンマーケティングとインフルエンサーマーケティングは類似した言葉・手法ですが、「ファンによるファンを増やすための戦略か、インフルエンサーによるファンを増やすための戦略か」という点で、2つの言葉は異なっています。
どちらにせよUGCの創出は非常に重要であり、ファンマーケティングの文脈の方が創出しやすいという傾向にあります。
米国の広告代理店イレブンス・ハウスPRのイレイナ・レビン社長は、「彼ら(コンテンツの制作者)は、厳密には場所や商品を体験するためにお金を受け取っていない。そのことによって、コンテンツがよりオーセンティックになる」とコメントしています。
加えて、UGCの魅力の一端は、商品や体験が自分の手にも届くものだと感じることであり、「UGCは手に届かない感覚とは違い、インクルーシブな(分け隔てのない)雰囲気を醸すために、人々がより親近感を覚えるのだと思う」と、インフルエンサーマーケティングの違いを語っています。
参照元:日経XTREND
引用URL:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00079/00165/
ファンマーケティングを活用することでどのようなメリットがあるのでしょうか?主な3つのメリットについて解説します。
ファンマーケティングを活用することで広まるファンの口コミが、自社商品・サービスの宣伝にも信頼度向上にもつながるというメリットがあります。
実際、米PowerReviews社の調査によると、オンラインで購入をする顧客の97%が「レビューを読んでから購入する」と答えています。
レビューを気にする人は失敗したくないという心理が大きく、損をしないために自ら情報収集を行います。
そこで口コミは大きな役割を果たします。口コミは「大好きな人からの最も信頼できる情報」でもあるためです。好意を積み上げてファンがファンを作るという段階を達成するには、ファンマーケティングは欠かせない施策といえるでしょう。
安定した売上基盤を築くことができるという点も、ファンマーケティングにおける大きなメリットです。
ファンマーケティングの理論として有名なものに、「パレートの法則」があります。別名「80:20の法則」とも呼ばれる本理論は、「20%の顧客が全体の80%の売上を生み出している」という考え方です。
この理論では、20%の顧客に注力するマーケティング=ファンマーケティングを行うことで、全体の売上向上が期待できます。そしてより良質なファンの育成を実現し、安定した売上基盤の構築へとつながるのです。
ファンマーケティングを行うことで、良質なフィードバックが受けられるというメリットもあります。
企業側だけでは気付けない細かい改善点にファンが気づいている可能性は高く、ファンと直接つながることで商品のフィードバックを得ることができます。また、その内容をもとに商品改良に取り組むことで、ファンからの信頼及び購買意欲の向上を見込むことができ、また新たな顧客の獲得へと繋がります。
企業だけではなく、顧客が自らが宣伝するという情報発信モデルの変化が、このような動きを生み出しています。
近年様々な業界で導入が進んでいるファンマーケティングですが、実際にどのように活用されているのでしょうか?
効果的な施策として主なものに「SNS・AR・ファンコミュニティ」を活用した施策があります。3つの施策における成功事例をそれぞれ紹介します。
SNSでの情報発信にはTwitter・TikTok・YouTube・Instagramなどがあります。
Twitterにおけるファンマーケティングの成功事例では、「丸亀製麺」を紹介します。
丸亀製麺はTwitterの役割を「ブランド認知〜再来店の促進」と捉え、以下の3つの戦略を打ち出しました。
①「丸亀製麺アカウントのファンを増やして、メディアとして大きくする」
②「丸亀製麺の情報にずっと触れている状態を作る」
③「認知を最大化させて売上を獲得する」
具体的には新商品のプロモーションにおいて、「ティザー(事前告知)」「ローンチ(販売開始)」「サステイン(ピーク後)」の期間ごとに情報を届けたい層を定め、話題にしてもらうような情報を提供し、UGCの創出に取り組みました。
本事例では「好意度やファンを獲得して売上につなげる」「商品・ブランド認知を最大化してLTVや他媒体を補完する」ことを目的としてTwitter運用を行ったのがポイントです。
また「UGCが増える→指名検索が増える→売上が伸びる」という傾向をうまく利用したと言えるでしょう。
キャンペーン実施のたびにUGC数が増えるという状態のあと、オーガニックのUGCの積層に課題があったためオーガニックのUGCを増やすことに注力する方針を打ち立てた丸亀製麺は、2020年10月以降は昨年を上回る数値を更新したほか、Twitterトレンド1位を2度獲得し、販売終了時まで商品の話題が継続するほど反響を呼びました。
参照元:hottolink「丸亀製麺と語る、Twitterを売上につなげる戦略【イベントレポート】」
引用元URL:https://www.hottolink.co.jp/column/20210622_109499/
数年前までは「10代を中心に、踊っている動画が流れているSNS」というイメージが多かったTikTokですが、今は「SNS広告・マーケティング活動をするのにもってこい」なSNSとして、ビジネス活用が進んでいます。
短い動画投稿と閲覧に特化したSNS「TikTok」を活用したファンマーケティングの成功事例には「ピザハット」の施策が挙げられます。
まずTikTokの特徴として、投稿をバズらせる要因となる以下の8つの指標があります。
①いいね率
②平均再生時間
③再生完了率
④ダウンロード数
⑤シェア率
⑥コメント率
⑦プロフィール閲覧率
⑧フォロー率
また、TikTokのアルゴリズムはユーザーの反応が良いコンテンツが他ユーザーにも表示される「コンテンツ起点」になっており、フォロワーが少なくてもバズりやすく、ファンが生まれやすいという傾向があります。
そこで、ドミノピザはTikTokを積極的に利用して、商品やピザを作る過程の動画を中心に投稿することで、TikTokユーザーに商品やブランドのプロモーションを行いました。
同社の動画投稿のポイントは、動画加工のユニークさやトレンドを抑えたアプローチと言えるでしょう。流行のハッシュタグや、TikTok上で流行っている曲を使用した動画を投稿しており、なかには3000件を超えるコメントや40万以上のいいねを獲得している「バズ動画」もあります。
また、TikTok上でユーザーとのコミュニケーションを密に取っている点もポイントです。ユーザーへの質問やコメントを通してユーザーと接触することで、ブランドの好感度や信頼度の向上へつなげることができます。
参考:ドミノピザ公式TikTok
YouTubeを活用した事例としては、北欧雑貨のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムを紹介します。
多くのチャンネルでコンテンツを配信しているクラシコムは、モーニングルーティーン「わたしの朝習慣」やルームツアー「あそびに行きたい家」などの動画だけでなく、世界観に合わせた短編ドラマや旅ドラマなども配信しており、SNSを利用した独自のブランディングを通して中長期的にファンを増やしつづけています。
また、オリジナルドラマ、ドキュメンタリー、Web記事、音楽プレイリストなど様々なコンテンツを発信しているのも特徴です。
顧客とのエンゲージメントはSNSやWebサイトなどの自社チャネルで獲得し、読み物や動画を楽しむためにWebサイトを訪問するという動機をユーザーに提供することで長期的な関係性の構築を実現しました。
このようなクラシコムの施策は、ユーザーが継続的に買い物をする環境を整えることで、新規顧客獲得のための広告費・販促費などを抑え、効率的に顧客を獲得している成功事例です。
Instagramを活用した成功事例では、マミーポコパンツ(MamyPoko)の施策を紹介します。
食品関連の企業や、アニメ・玩具関連の企業が実施することが多いファンマーケティングの中で、子供向けの生活用品を展開する企業の事例は少ないため、ご紹介いたします。
マミーポコパンツのInstagramアカウントでは、ブランドのファンが集まってファンとブランドが、そしてファン同士がコミュニケーションの場として活用し、単なる情報発信としてだけではなくマーケティングにおいても重要な役割を担っているのが特徴です。
2019年にInstagramアカウントを開設した同ブランドは、まず子供や兄弟、家族など、ユーザーのニーズを満たし、且つブランドらしさである「わくわく」が伝わるような投稿をして、土台となるフォロワーを増やしていきました。
その後はユーザーが有益だと感じる投稿へと移行していくと同時に、ファンに質問を投げかけたり、コメントを返したりして、コミュニケーションの活性化・強化にも比重を置いた取り組みを行いました。
そしてファンとの信頼関係を構築することに成功した後はコミュニティメンバーを募り、ブランドのキャンペーン情報や最新情報などを限定で先行配信するなど、よりファンとの関係が密接になるような施策を実施したのです。
同ブランドの事例は、段階を踏んでファンと良好な関係を築いていくことができれば、ファンはブランドの資産となり、今後自社のさらなる飛躍が望めるようになるという成功事例として参考になります。
ファンマーケティングにおいてAR(拡張現実)の活用も有効な施策です。近年注目されているので、詳細の事例をご紹介します。
主にエンターテインメントと教育の分野で事業を展開するイマジニア株式会社は、ゲームアプリ『メダロットS』のキャンペーンにおいてウェブARを活用しました。
2019年に開催した音楽イベントでもARアプリを活用した同社は翌年、アプリ不要で利用できるウェブAR・ブラウザAR®「LESSAR」を採用し、スマートフォン用ロボットバトルRPG『メダロットS』のキャンペーン企画に導入しました。
キャンペーン内容は、特設サイトにスマートフォンでアクセスし、AR体験したいキャラクター画像をタップすると、作中のメダロットの3DモデルがARで出現するというもので、ゲーム内の体験を平面認識ARでリアルに実現できる体験をユーザーに提供しました。
また新型コロナウイルスが話題になる時期だったことから、「おうちでARメダロットキャンペーン」と銘打ち、ハッシュタグ「#おうちでARメダロット」をつけてTwitterに投稿するフォトコンテストなどを実施。
SNS上で多くのユーザーから反響があり、ARのアクセス数も1日あたり3000を超え、ユーザーに楽しんでもらえる企画を実現できたそうです。
参照元:「ウェブAR「LESSAR」が人気ゲームアプリ『メダロットS』の100万DLキャンペーンに採用」
米国シアトル発祥のスペシャルティコーヒーショップ「タリーズコーヒー」を日本で展開するタリーズコーヒージャパン株式会社は、2022年2月10日~2022年3月17日まで、ARを活用したトムとジェリーとのコラボキャンペーン「トムとジェリー 桜舞うスペシャルコーヒータイム」を全国のタリーズ店舗で開催しました。
企画内容は、対象商品購入時に印字されるレシートのQRコードをスマートフォンで読み込むと、お花見したり、桜の中でかけっこをするトムとジェリーのフォトフレームがARでランダムに出現するというもの。
ARを活用することでファン層に興味を持ってもらうことに加え、AR体験をSNSへ投稿してもらうことによるプロモーション効果や認知度の向上などを狙いました。アプリ不要で、わかりやすく利用できることからウェブAR・ブラウザAR®「LESSAR」を採用し、より多くのユーザーに楽しんでもらえるよう工夫したそうです。
「LESSAR」の管理画面ではログ情報などを確認することができ、ユーザーの反応を可視化できるのも特徴。本企画では1人当たり平均2、3回ARコンテンツを体験していたことがわかりました。また期間中にAR企画を5万人以上のユーザーが体験したほか、アクセス数は13万PVにまでのぼるという結果が出ました。
参照元:「タリーズコーヒーのトムとジェリーコラボキャンペーンにてARを使った店舗体験企画を実施。5万人以上がARを体験し、ARのアクセス数は13万PV!」
ファンマーケティングにおいて、企業とファンが、もしくはファン同士が接触することができるファンコミュニティの構築も非常に有効です。
飲料、食品、調味料の大手総合メーカーであるカゴメは、ファン・コミュニティー・サイト「&KAGOME」を運営し、2021年9月時点で会員数が4.9万人になるまで成長を続けています。
2015年4月にスタートしたファンサイト「&KAGOME」は、2014年に行った顧客構造の分析のもと、売上金額が高い上位の2.5%の顧客が全体の売上の30%を占めていることが明らかになったことから、ファンに向けてよりブランドに愛着を持ってもらうためのアプローチとして開設されました。
本サイトの軸となるのは、会員が自由に投稿する商品レビューやレシピ、カゴメからの情報発信の場である「カゴメ便り」や掲示板などです。会員登録は無料で、コメントや投稿を通してカゴメの社員や会員同士で交流することができるほか、新商品に関するアンケートや、野菜の豆知識を紹介するコーナーなど、ファンが楽しめる様々なコンテンツが設けられています。
参照元:日経XTREND「6年目の老舗、カゴメに学ぶファンサイト運営術 SNSとどう分ける」
成功事例の中でも特にSNSは無料で始められる上に、元々の利用者数も多く幅広いファンにアプローチできることから、利用している企業は増加しています。SNSは幅広い層にアプローチできることが明らかですが、「コアファン」向けの施策については現在も調査や研究が進められていると言ってよいでしょう。
以下では「コアファン」向けの施策に関する書物や研究論文について紹介します。
『ネット・コミ ュニティのマーケティング戦略』(池尾恭一編)に記載されたファンコミュニティに関する解説について、同文書を引用しつつ、概要を以下でご説明します。
ネット・コミュニティは、大きく分けて「①特定のメーカーが自社の商品について組織化しているもの」「②中立的な企業がメーカー横断的に組織化しているもの」「③消費者が自発的に組織化しているもの」の3種類に分類することができます。
多くの企業が自社のファンの囲い込みを狙って「①特定のメーカーが自社の商品について組織化している」コミュニティの構成を試みる傾向にありますが、「うまくいかなかったり、うまくいったとしても限定的な熱狂的ファンだけが集まり、企業が狙うファン層の拡大には貢献しなかったりする場合」が多くあります。
また企業がファン同士のコミュニケーションに介入して、自社にとって都合のよい方向へと誘導しようとすれば、「強い拒絶反応をくらって逆効果になる」ケースが多いことは明らかです。
以上のことから、ネット・コミュニティは企業にとって非常にコントロールしにくい存在であり、短絡的な利用は難しいため、中長期的な戦略を設計・実行することが重要であるということがわかります。
参照元:『ネット・コミュニティのマーケティング戦略』池尾 恭一 編
コアファン向けの施策について、日経BPより出版されている『未顧客理解:なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか? 』でも詳しく解説されています。
(ここでは、コアファン=ヘビーユーザー、ライトファン=ライトユーザーとしています。)
先述で少し触れた、既存顧客の上位20%が、売上全体の80%を生み出すという「パレートの法則」に関して、近年の研究では「上位20%の短期的な売上貢献はおよそ50〜60%程度であること」が報告されています(Sharp et al., 2019; Dawes et al., 2022)。
パレードの法則の「80%」という高い売上貢献度は、5〜6年という長期スパンで捉えた時に実現する考え方です(Kim et al., 2017; Sharp et al., 2019 )。そうなると上位20%のユーザーはそれだけの長期間、ヘビーユーザーであり続けるのか?という疑問がわくと思います。
そこで、15の異なる商材カテゴリで150以上のブランドを分析した研究が行われました。その研究においては「現在のヘビーユーザーの約半分が1年で入れ替わる」という結果が出ています(Romaniuk & Wight, 2015)。
現在主流のマーケティングではコアファンや既存顧客にフォーカスした施策が話題になることが多いですが、このような視点から考えると、「ヘビーユーザー向けのみの施策は事業成長につながる」とは断言しにくいです。コアファンの多くが「ヘビーユーザーに見えるライトユーザー」で、タイミングや確率的にヘビーユーザーとしてラベリングされた顧客がいる、とみなす方が現実的ととらえた方が良いでしょう。
そのため、売り上げ拡大を目的としたファンマーケティングに必要なことは、ヘビーユーザーにより多く購入してもらうよりかは、ライトユーザーの購入回数を増やし、ヘビーユーザー化する人を増やす施策と、ライトユーザーの母数を拡大させることと言えます。
そこに共通する重要な視点は、「第一想起されるブランド・商品」となる結び付きの機会を増やす(接触回数の増加)ということです。
具体的には「多くのチャネル・媒体でブランド露出する」「ユーザーに注目・拡散されやすいコンテンツを作る」ことです。
この「ユーザーに注目・拡散されやすいコンテンツを作る」について、コアとなる考え方が「UGC創出」であり、広義におけるファンマーケティングを行う意味でもあります。
参照元:ファンマーケティングとは?(ファンマーケティングに立ちはだかる4つの壁)
参照元:『未顧客理解:なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか? 』(日経BP)
参照元:売上増には「知らない・買わない・興味のない未顧客」の理解が鍵
上記の書物・論文や米国でのいくつかのファンマーケティング事例から、ユーザーが自然に生み出したコンテンツ(UGC)の創出がキーとなることがわかりました。
以下ではUGCの創出が期待できる、ファンマーケティングの最新トレンドについて紹介します。
「ユーザーが自発的に作成するコンテンツ」であるUGCの創出のために、企業側はユーザーがよりシェアしやすい、もしくは話題にしやすいような土台を作ることが必要です。
そこで最適な方法のひとつが拡散力のあるSNSにおけるハッシュタグキャンペーンの実施です。
企業側は「商品・サービスのハッシュタグ」を用意し、Webサイトや公式アカウントにて提示します。投稿にハッシュタグをつけることで、同じ興味関心があるユーザーが互いを見つけやすくなり、ユーザー同士が交流をもつ機会が増えることでUGCの創出が期待できます。
シェアしたくなるようなコンテンツを提供することも大切です。ユーザーが思わずSNSに投稿したくなるリッチな体験を提供し、利用しやすいハッシュタグを用意することで、プロモーション効果及びUGCを創出する可能性の向上が見込めます。
またイベントに関連したSNSキャンペーンを実施する際にもハッシュタグは効果的です。
UGCを増やすため、SNS上でARを活用したキャンペーンを実施する「AR×SNSマーケティング」を取り入れる企業が増加しています。
ARを活用したリッチコンテンツを提供することで、「おもしろい!」「すごい!」といったポジティブな感情を生む体験を味わってもらえるほか、オンライン/オフラインどちらでも気軽に体験してもらえるというメリットがあります。
さらにARは商品・サービスに付加価値を与えたり、イベントの体験性を向上させたりすることができるため、UGCの創出が期待できるのもポイントです。
成果を出すためにはどのようにARを企画に活用するかが重要で、ユーザーのニーズに合ったコンテンツの提供やAR体験へのハードルを下げるなどの工夫をすることで、最適なUGCの創出が行えるでしょう。
加えて、企画ごとに効果測定・PDCAを行って継続的に体験価値を向上していくことは、ファンの育成においても効果的です。
SNSキャンペーンを通して様々なマーケティング成果を出しているBtoC企業が増えています。
ARは今後市場規模の拡大が予想されており、今最もホットなコンテンツのひとつといえます。
NPS(ネット・プロモーター・スコア)とは、顧客ロイヤルティを数値化する指標です。
これまでファンマーケティングは施策ベースで成果計測がしづらいと言う課題がありましたが、NPSを取り入れて数値化することで指標が明確になります。シンプルな方法でありながら業績と強い相関があるため、現在導入する企業が増加しています。
NPSの計測方法は「あなたはこの商品やサービスを、家族や親しい友人にどの程度勧めたいと思いますか?」とユーザーに質問し、0〜10点で評価してもらうという非常に簡単な手法です。
0〜6点を付けたユーザーを「批判者」、7・8点を付けたユーザーを「中立者」、9・10点を付けたユーザーを「推奨者」と分類し、以下のように計算することでNPSの数値を計測可能です。
「推奨者」(60%)ー「批判者」(20%)=NPS(40%)
推奨者が増加するほど、もしくは批判者が減るほどNPSの数値は高まる、つまり顧客ロイヤルティが高いことがわかります。この数値をもとに、さらなる商品・サービスの改善に取り組むことでUGCの創出、そして自社の利益へとつながっていきます。
ファンマーケティングは近年様々な企業が取り組み始めている最も見逃せないマーケティング手法のひとつです。どの事例においても「中長期でファンを増やして売上につなげていく」ということを前提とした設計と施策が重要といえます。
その中でも、UGCの創出はファンとのコミュニケーション機会を増やすだけでなく、新規ユーザーに認知してもらう施策としても非常に有効です。
最新トレンドでも紹介したARは「体験性の向上」や「驚きやわくわくなどポジティブな感情の創出」が得意な施策であり、ファンマーケティングにおいてとても相性が良いとされています。拡散力があってシェアしやすいSNSとの連携などで、さらなるUGC創出なども目指せます。
ファンマーケティングの選択肢の一つとして、ARやSNSを活用したファンマーケティングについて、まとまった資料でも解説しているので、ぜひご覧ください。
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この記事を書いた人
導入実績7,100社以上を誇るARプロモーションツール「COCOAR(ココアル)」のプロダクトチームが運営。 2012年からARアプリ「COCOAR」をはじめ、ウェブAR「LESSAR」を開発・提供しているクラウドサーカスが保有する「AR」に関するお役立ち情報を配信しています。
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